条文
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
解説
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、本人ではなく、その代理人のためにおこなったものとみなします。
ただし、意思表示の相手方が、代理人が本人のために意思表示をすることを知り、または知ることができたときは、
第99条第1項の規定を準用します。
これはどういうことかというと、代理によってなされる意思表示、つまり代理行為というのは、本人のためにおこなうことを明示さなければならない、という原則を規定しているわけです。
この原則を「顕名主義の原則」といいます。
顕名とは、本人の氏名を示すことのことです。
なお、「本人のために」というのは、「本人の利益のため」という意味ではありません。
これは、あくまで、「本人に意思表示の結果を帰属させるため」ということです。
ですから、結果的に本人にとって不利益になったとしても、その結果は本人に帰属します。
ただし、代理人が意思表示をする相手方が、代理人が本人のために意思表示をすることを知り、または知ることができたときは、
第99条第1項と同様に、直接本人にその意思表示の効果が帰属する、ということです。
ちなみに、商行為、つまり事業者同士のビジネスの取引の場合は、本条の例外として、商法504条が適用されます。
そのため、商行為の代理行為の場合は、本人のためにすることが示されていなかったとしても、その代理行為の効果は、本人に帰属します。
契約書作成実務における注意点
契約書作成実務においては、代理人と契約を結ぶ場合は、必ず、代理人と本人の関係を明確にする必要があります。
そうしないと、本条が適用され、本人のための代理行為が、代理人のための代理行為となってしまう可能性があります。
そうなると、その契約は、代理人との契約になってしまうため、その契約の結果は、大きく変わってしまいます。
例えば、本人が大変な資産家で、かつ、契約内容が大規模な資金が動くような契約だった場合、代理人はさほど財産を持っていなかったきは、この契約は、極めてリスクが高い契約です。
うっかり本人のためにすることを示さないで契約を結んでしまった場合、代理人は、とても用意できないような金額を動かす契約を守らなくてはならなくなります。
こうなってしまうと、代理人にとっても、相手方にとっても、不幸な結果になってしまいます。
ですから、契約書の前文に、代理人と本人の関係を明記し、代理人は本人のために契約を結ぶ旨も、併せて明記しておきましょう。
さらに、署名・押印をする際にも、本人の名前とともに、代理人としての肩書きを明記したうえで、代理人の名前を署名をしましょう。
なお、商法504条によって、商行為、つまり事業者同士のビジネスの取引の場合は、本人のためということを明記しなくてもいいことにはなっていますが、それでも、契約書には、必ず本人のためということを明記しましょう。
というのも、契約書に代理人の名前しか書いていない場合は、やはり代理人個人と契約したように判断される可能性があるからです。
つまり、商法の規定が、100%適用される保証はどこにもない、ということです。
特に、事業規模の大きい法人同士の契約の場合は、その契約によって動く資金の規模も大きくなります。
ですから、代理人個人にその効果が帰属するような事態になると、その代理人には背負いきれない責任が覆いかぶさってくることになります。
このような事態を避けるためにも、商行為の代理であっても、契約書に、本人のために契約を結ぶ旨を明記しましょう。
注意するべき契約書
代理人が当事者となっている契約書。