条文
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
解説
代理権の権限が具体的に規定されていない代理人は、以下の各号に掲げる行為のみをおこなう権限を有します。
(1) 保存行為(財産の現状を維持するための
法律行為。)
(2) 代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内において、
その利用または改良を目的とする行為(それぞれ「利用行為」、
「改良行為」といいます。)
これはどういうことかというと、代理権の権限が具体的に規定されていないと、代理人がどのような行為をおこなうことが許されているのかが、まったくわかりません。
ですから、本条によって、最低限の権限を規定しています。
実際には、具体的に権限が規定されていない代理権については、その契約の慣習や個別具体的な内容によって、判断されることが多いようです(判例)。
ただ、だからといって、すべての権限が定められていない代理人の代理行為が、このように判断されるとは限りません。
第1号の保存行為とは、例えば、建物や自動車などの、物の価値を維持するための行為や、魚や野菜などのような腐りやすいものを現金化する行為などのことをいいます。
第2号前半の「利用行為」とは、物を利用することによって、収益を上げる行為のことをいいます。
例えば、建物を賃貸することによって収益を上げる行為などのことをいいます。
第2号後半の「改良行為」とは、物に改良を施すことによって、その物の価値を向上させる行為をいいます。
例えば、エアコンの付いていない建物にエアコンを付ける行為などのことをいいます。
なお、第2号の利用行為や改良行為は、あくまで「性質を変えない範囲内」でしかおこなうことはできません。
ですから、本条をもとにして、例えば、建物を勝手に売却して預金や株式に変えてしまうことはできません。
契約書作成実務における注意点
契約書作成実務においては、代理権の範囲は、委任契約や委任状によって、明確に規定しておくべきです。
つまり、本条が適用されるような状況になってしまうことは、避けなければなりません。
どういう行為が本条における保存行為、利用行為、改良行為に該当するかは、その代理権の対象となる権利や物、あるいは代理権の内容によって、変わってきます。
そういう意味では、いかに本条があるとはいえ、本条が適用されるかどうか自体がはっきりしません。
ですから、代理権の範囲は、できるかぎり詳細かつ具体的に規定しておくようにしましょう。
注意するべき契約書
代理人が当事者となっている契約書。
委任契約書。
委任状。
業務委託契約書。