条文
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
解説
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者、つまり、代理権の付与を表示した本人は、その代理権の範囲内において、代理人が第三者との間でした行為について責任を負わなくてはなりません。
ただし、第三者(=その行為の相手方)が、その代理人が代理権を与えられていないことを知っていたか、または不注意によって知らなかったときは、その責任を免れることがでる、ということです。
これは、いわゆる
「代理権付与表示による表見代理」です。
表見代理は、要件さえ満たせば、有効な代理行為と同様の効果が発生します。
契約書作成実務における注意点
代理権を授与する側の本人にとってみれば、厄介な条文です。
というのも、与えてもいない代理権を、ついうっかりでも第三者に対して表示してしまうと、代理人が勝手に動き出すおそれがあります。
そうなると、契約の相手方から責任を追及されて、不本意な契約内容を押し付けられてしまう可能性があるからです。
特に会社の場合は、会社の商号や支店の名義などの使用許諾は、本条に該当する可能性がありますので、注意しましょう。
実務上は、そう頻繁にあるような問題ではありませんが、代理権の授与に関しては非常にデリケートな問題です。
そういう意味では、何事も安易に済まさずに、代理人との委任契約や、委任状の作成など、しっかりとした手続きでおこないましょう。
また、代理人と取引をする立場となった場合は、本人からの代理権が示されるわけですから、一応は安心できる条文といえます。
ただし、この条文を持ち出さなくてはならない状態ということであれば、もうすでにトラブルとなっている可能性が高いと思われます。
確かに、本条によって法的には保護されたとしても、ビジネス上ではいろんなコストがかかってしまって、結果的には損してしまうことも考えられます。
ですから、あまりこのような条文をあてにせずに、委任状等でしっかりと代理権の確認をしておきましょう。
このような確認を怠ると、本条但書きの「過失」と判断され、その結果、本条による保護を受けることができなくなる可能性もあります。
また、確認した結果、実は代理権の授与は無かったのに、そのまま契約を結んでしまった、という場合もまた同様です。
注意するべき契約書
委任契約書。
委任状。
代理人が当事者となる
契約書全般。