民法 第112条
    (代理権消滅後の表見代理)

条文

代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

解説

代理権の消滅は、善意の相手方に対しては、これを主張することはできません。

ただし、相手方が不注意によってその事実を知らなかったときは、代理権の消滅を主張できます。

これは、いわゆる「代理権消滅後の表見代理」です。



表見代理は、要件さえ満たせば、通常の有効な代理行為と同様の効果が発生します。

本条の要件は、「代理権が消滅している」ということと、「相手方が代理権が既に消失しているということを知らなかった(=善意)」ということに加えて、「知らなかったことについて不注意が無かった」ことの三点です。

契約書作成実務における注意点

実務上は、代理権を授与して委任する(本人の)立場になった場合、本条の表見代理は、委任状や委任契約書をしっかりと書いておくことによって、比較的簡単にトラブルを防ぐことはできます。

つまり、相手方に代理権の消滅という事実を周知徹底させる、ということです。

具体的には、どのような条件の下で代理権が消滅するのか、委任契約の期間はいつまでなのか、どういう条件で委任契約を解除するのか、といった条項を、委任状や委任契約書に記載しましょう。



ただ、このような条項も、相手方に周知されていなければ意味はありません。

ですから、代理権については、代理人を通じてではなく、直接相手方に対して別個に通知するべきです。

特に、実際に代理権が消滅した場合、代理人が後々代理権を悪用するようなリスクがあるようでしたら、相手方に対して、書面などで代理権消滅の旨を通知しておきましょう。



なお、任意後見人の代理権の消失は、登記をしなくてはならないことになっていますので、注意してください(任意後見契約に関する法律第11条)。

また、会社などの場合、退職した従業員による表見代理行為がおこなわれる可能性があります。

このような事態を防ぐために、対外的な引継ぎ作業は、間違い無くおこなうようにしましょう。

当然のことですが、名刺や社員証、社章などの、社員としての資格(=代理権)を証明するようなものは、返還させるようにしなければなりません。

なお、このような引継ぎや物品の返還に関する義務も、就業規則や社内規程に記載しておくべきです。

注意するべき契約書

委任契約書。

委任状。

代理人が当事者となる契約書全般

就業規則や社内規定、誓約書、宣誓書など。

このサイトの全てまたは一部につき、無断の転写・転載は厳にお断り致します。

このサイトはリンクフリーです。
相互リンクもおこなっています。相互リンクをご希望の場合は、リンクについてをご覧ください。

ご意見・ご感想などがございましたら、ぜひr_osanai@msj.biglobe.ne.jpまでお寄せください。