条文
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
解説
有効な代理権のない者が他人の代理人として契約してしまった場合は、本人がその契約を追認をしないかぎり、本人に対してその契約の効力が生じません。
本項は、本人にとっては何も知らない他人が勝手に代理人となってしまうことを防止するための条文です。
このような無権代理が認められてしまうと、本人にとっては、無権代理人によって勝手に財産を処分されてしまったり、いつのまにか高額な商品を買っていることになったりと、経済活動に大混乱を生じることになります。
そういう意味では、きわめて重要な条文です。
このような無権代理行為は、本人が事後に追認しなければ、「効果を生じない」ということになっています。
では、宙に浮いたその契約はどうなるかというと、その契約の相手方の選択に従って、無権代理人がその契約を履行するか、または損害を賠償することで決着を図ります(
第117条第1項参照。)。
ただ、これはあくまで原則ですから、例外として表見代理(
第109条、
第110条、
第112条参照。)となる場合は、適用されません。
契約書作成実務における注意点
契約書作成実務の現場では、契約の当事者が代理人であることは、よくあることです。
代理人と契約を結ぶ際には、その代理人が有効な代理権にもとづく正式な代理人かどうかを確認する必要があります。
代理権を確認するには、委任状を書いてもらったり、印鑑証明の提示を求めたりと、複雑な手続き経なければなりません。
非常に面倒な手続きですが、代理人の代理権に疑いのあるときは、必ず代理権について確認してください。
そうしないと、万が一、その代理行為が無権代理行為だった場合、後々に大変なトラブルになります。
確かに、法律上では
第117条第1項によって、無権代理人に対して責任(契約の履行か損害賠償)を課しています。
ですが、あくまでこの条文は、そういう要求ができるというだけの話です。
そうした要求したところで、契約の履行ができる能力が無ければ、損害を賠償する資力や財産も無い、という無権代理人が相手では、泣き寝入りするハメになります。
また、ビジネス上の契約書作成実務においても、代理人に対する注意は必要です。
特に、株式会社や有限会社との契約の場合、原則として、契約締結の権限を持っているのは代表権のある者(例:株式会社の代表取締役)に限られています。
ただ、例外として、会社法の各種規定によって、契約の当事者となることのできる者の範囲は、比較的広く解釈されています。
それでも、高額な取引となる契約や、事業の根幹にかかわる契約の場合は、代表権者と直接契約を交わすなり、代表権者の正式な委任状や印鑑証明を要求するなど、後々にトラブルにならないように、事前にリスクへの対策を取っておきましょう。
なお、契約締結後でも構いませんので、代理人の代理権に疑いがある場合は、本人に対して、追認するかどうかの催告
(第114条)をしてみてください。
その代理権が無権代理だった場合は、催告することによって、無権代理行為が発覚することになるでしょう。
注意するべき契約書
契約書全般。
特に、事業者間でのビジネス上の契約書。