条文
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
解説
取り消された行為は、初めから無効、つまり「無かったこと」とみなします。
ただし、
制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度(これを
現存利益といいます。)において、返還の義務を負います。
これはどういうことかというと、取り消された行為は、初めから無かったものとされます。
そして、通常は、その行為によって何か利益を得ている場合、その行為の当事者は、不当利得(
第703条)として、その利益を返還する義務を負います。
ただし、
制限行為能力者が当事者の場合は、
制限行為能力者には、現存利益のみの返還しか義務付けられていません。
つまり逆に言うと、利益が残っていない部分に関しては、返還する必要がありません。
契約書作成実務における注意点
制限行為能力者との契約の際に、ある意味では、最も高いリスクとなる条文が本条です。
つまり、うっかり
制限行為能力者と契約を結んでしまった場合、その
制限行為能力者が取り消す前にその契約によって発生した利益を浪費されてしまったときは、不当利得の返還を請求したところで、返すものが無い、という状況になる可能性があります。
例えば、
未成年者に100万円を貸して、ギャンブルで90万円使ってしまった後に取り消された場合は、「現存利益」が10万円と判断されます(判例)。
つまり、10万円しか返さなくてもいい、ということになります。
当然、90万円は大損ということになり、救済されることはありません。
未成年者と契約を結んだほう迂闊だった、ということになります。
これほどのリスクがあるのですから、制限行為能力者を相手方とした契約を結ぶ際は、細心の注意を払いましょう。
注意するべき契約書
契約書全般。
特に、制限行為能力者が当事者となる契約書。