条文
前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
解説
第124条(
第124条第1項、
同条第2項、
同条第3項参照。)の規定により追認をすることができる時点以後に、取り消すことができる行為(
第120条第1項解説参照。)について以下の各号に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなします。
ただし、異議をとどめたときは、この限りではありません。
(1) 全部または一部の履行
(自らの債務の履行や相手方の債務の履行の受領をいいます。)
(2) 履行の請求
(取消権者(
第120条第1項、
第120条第2項参照。)によるものに
限ります。)
(3) 更改
(更改とは、ある債務を消滅させて、新たな債務を生じさせることを
いいます。取消権者が債務者であると債権者であるとを問いません。
第513条を参照。)
(4) 担保の供与
(ある債務について、自ら担保を提供するか、または相手方から担保
を提供されることです。)
(5) 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の
譲渡
(いわゆる債権譲渡のことです。)
(6) 強制執行
(相手方から強制執行をされた場合のことです。)
以上の各号の場合であっても、必ずしも取消権者に追認の意図があるとは限りません。
ですが、通常、以上の各号の行為をおこなう場合は、追認の意図がある場合が多いため、民法によって(だからこそ「法定」という表現になっています。)追認とする、ということが、本条の趣旨です。
なお、「異議をとどめたとき」とは、追認するつもりはないけれども、本条各号に掲げられたことをおこなう場合のことをいいます。
契約書作成実務における注意点
契約書作成実務においては、本条を利用することによって、相手方の法定追認を誘発することを狙うことができます。
ですが、契約(特にビジネスにおけるもの)というのは、原則として、相互の信頼にもとづくものです。
ですから、本条を利用することによって、一種の騙まし討ちのようなやり方で法定追認を誘発するようなことは、あまりお勧めできません。
このような形で確定した契約というのは、いかに有効に確定したものであるとはいえ、その後で、相手方に守ってもらえなくなる可能性が高いです。
ですから、できるだけ、相手方の合意がある形での追認(
第122条参照。)を得ることをお勧めします。
また、取り消すことができる行為をおこなってしまった場合は、本条によって法定追認をおこなってしまわないように、注意しましょう。
もし、本条各号に該当することをおこなわなければならない場合は、但書にあるように異議をとどめることによって、法定追認にならないようにしましょう。
注意するべき契約書
契約書全般。
制限行為能力者を当事者とする契約書。