条文
保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
解説
第13条第1項や
第13条第2項によって、
保佐人の同意を得なければならない
被保佐人の行為であって、その同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可(
第13条第3項参照。)を得ないでおこなったものは、取り消す(
第120条第1項参照。)ことができます。
これはどういうことかというと、
被保佐人が制限されている行為は、
保佐人の同意や家庭裁判所の許可が無ければ取り消すことができる、ということです。
本条は、判断力が不十分な
被保佐人を保護するための、具体的な条文です。
契約書作成実務における注意点
契約書作成実務におけるリスク管理という点では、
行為能力が制限されている
被保佐人との契約には、細心の注意を払う必要があります。
その最たる根拠となるのが、本条になります。
(ただし、日常生活に関するものは除きます。)
つまり、どんなにしっかりとした契約書を作り、抜かりない手続で契約書に署名・押印し、各種法律にもなんら抵触していない契約を結んだとしても、相手が
被保佐人である以上は、この規定によって、後で取り消される(
第120条第1項参照。)可能性があります。
つまり、
被保佐人との契約は不完全なものであり、それだけ
被保佐人との契約はリスクが高い、ということを意味します。
特に、
第13条第2項によって制限されている
被保佐人の行為を契約の相手方が知ることは、非常に困難です。
というのも、
第13条第2項によって制限される
被保佐人の行為は、
後見登記等に関する法律第4条第1項第5号によって、
東京法務局に登記されます。
ところが、
被保佐人の契約の相手方は、その登記事項の証明書の交付を請求できないことになっています(被保佐人やその関係者はできます。)。
つまり、
被保佐人の契約の相手方は、被保佐人の側に対して、登記事項の証明書の提示を求めることによってしか、本項をもとにして制限されている被保佐人の行為の内容がわからないのです。
また、なによりも、取り消された後の不当利得(
第703条)の返還請求が困難であるという点が、非常に厄介です(
第121条参照。)。
ですから、契約書作成実務という点や、ビジネス上のリスク管理という点では、そもそも
被保佐人を対象としたビジネスは、避けるべきものかもしれません。
ただ、そうはいっても、
被保佐人と契約をしなくてはならない状況があるかもしれません。
そのような場合、実務上、リスクを抑えて
被保佐人と契約を結ぶのであれば、契約締結の場に、
保佐人も同席してもらい、同意を取り付ける形で契約に調印することになります。
原則として、
保佐人には代理権が付与されていません(付与することは可能です。
第876条の4第1項を参照。)。
ですから、同意を得ることでしか、取り消しによるリスクを避けることはできません。
つまり、
被保佐人と
保佐人の双方と契約交渉をおこなうことが重要となります。
こうすることによって、少なくとも、
被保佐人の単独行為を理由として契約を取り消されるリスクは無くなります。
逆に、
被保佐人を保護する立場にある人は、
被保佐人は本条によって、強力に保護されているということを覚えておいてください。
注意するべき契約書
被保佐人が当事者となる
契約書全般。