条文
前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
解説
第166条第1項の規定は、始期付権利(
第135条第1項参照。)または停止条件付権利(
第128条参照。)の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時点から取得時効が進行することを妨げません。
ただし、権利者は、その時効を中断(
第147条参照。)するため、いつでも占有者の承認を求めることができます。
これはどういうことかというと、始期付の権利(例えば、○月○日になったらある土地をもらう、という権利。)や停止条件付(例えば、大学に合格したら自動車をもらう、という権利。)について、第三者がその目的物(例での土地や自動車。)を占有していた場合であっても、その目的物の占有開始の時点から取得時効は進行します。
ただし、権利者(例での土地や自動車をもらう者)は、その時効を中断するために、たとえまだその権利がものとなっていない場合(始期が到来していない場合や停止条件が成就していない場合)であっても、いつでも占有者の承認を求めることができます。
契約書作成実務における注意点
契約書作成実務において、時効制度そのものは、あまり問題とはなりません。
というのも、時効が問題となる状況では、すでに契約上の信頼関係は存在しないことが多いです。
そのような状況であれば、どのように契約書を作っていようとも、もはやどうにかなるものではないからです。
また、そもそも、時効制度自体、ほとんどが
強行規定ですから、契約書によってどうにかできるものではありません。
消滅時効や
取得時効についても、契約書作成実務が関わってくる点は、せいぜい、当事者間の特約で、時効期間を短縮できるという点くらいです。
消滅時効や取得時効を援用される(
第145条参照。)側は、その時効を援用されることによって、自己の権利が相手方に移転したり消滅したりすることがないように気をつけましょう。
特に、始期が到来する前や停止条件が成就する前であっても、本項によって、権利者は、第三者に対して、承認を求めることができます。
ですから、仮に契約書に始期付権利や停止条件権利が規定されている場合、第三者による取得時効にかかりそうなときは、たとえ始期が到来していなかったり停止条件が成就していなかったとしても、本項但書によって、承認を求めるようにしましょう。
注意するべき契約書
契約書全般。