民法 第174条
    (一年の短期消滅時効)

条文

次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一  月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に
   係る債権
二  自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又は
   その供給した物の代価に係る債権
三  運送賃に係る債権
四  旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、
   席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
五  動産の損料に係る債権

解説

以下の各号に掲げる債権は、1年間行使しない場合は、消滅します。

(1) 月またはこれより短い時期によって定めた使用人の給料に
   係る債権

(2) 自己の労力の提供または演芸を業とする者の報酬または
   その供給した物の代価に係る債権

(3) 運送賃に係る債権

(4) 旅館、料理店、飲食店、貸席または娯楽場の宿泊料、飲食料、
   席料、入場料、消費物の代価または立替金に係る債権

(5) 動産の損料に係る債権



第1号は、月単位以下の、いわゆる労働契約による給料債権のことです。

ただし、労働基準法が適用される労働契約の場合は、労働基準法第115条(賃金は2年、退職金は5年の消滅時効)などが適用されます。

第2号は、現代でいうところの芸能人によるエンターテイメント関係の契約のことです。

ただし、実態によっては、本号に該当しない場合もあります。

第3号は、旅客や貨物の運送契約のことです。

第4号は、ホテルや旅館などの宿泊契約、料理屋のサービスに関する契約などのことです。

第5号は、貸衣装、レンタカー、レンタルビデオ、レンタルDVD、レンタルCDなどの、極めて短期間で貸し出される物の損料のことです。

本号には、長期間の賃貸借やリース契約には適用されません。



本条各号に規定されている債権は、日常的に頻繁におこなわれている契約にもとづく債権です。

そういう意味では、本条は、短期間での消滅時効を規定することで、権利関係を単純化しています。



また、本条は、現在から100年以上も前の民法が施行された時代背景をもとにして規定されている条文です。

ですから、現代の経済事情に合わせて解釈されるべきものです。

つまり、それだけ、いざトラブルになった場合には、裁判によって、どうなるか予測しづらい条文でもあります。

契約書作成実務における注意点

契約書作成実務において、時効制度そのものは、あまり問題とはなりません。

というのも、時効が問題となる状況では、すでに契約上の信頼関係は存在しないことが多いです。

そのような状況であれば、どのように契約書を作っていようとも、もはやどうにかなるものではないからです。

また、そもそも、時効制度自体、ほとんどが強行規定ですから、契約書によってどうにかできるものではありません。



消滅時効取得時効についても、契約書作成実務が関わってくる点は、せいぜい、当事者間の特約で、時効期間を短縮できるという点くらいです。

消滅時効や取得時効を援用される(第145条参照。)側は、その時効を援用されることによって、自己の権利が相手方に移転したり消滅したりすることがないように気をつけましょう。



ただ、本条に規定されている債権は、契約実務においては典型的な債権です。

ですから、実際に本条が問題となることがあります。



本条における消滅時効の期間は1年と、かなりその期間は短いほうといえます。

ですから、本条各号に規定されている債権の債権者は、できるだけ、時効の中断(第147条参照。)などの債務者による時効の援用(第145条参照。)を防ぐための措置を取るようにしましょう。

注意するべき契約書

雇用・労働契約(労働基準法が適用されるものを除きます)。

エンターテイメント契約書

旅客運送約款

貨物自動車利用運送約款

宿泊約款

レンタカー貸渡約款

各種レンタル契約書

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