条文
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
解説
失踪者が生きていること、または
第31条に規定する時とは異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人または利害関係人の請求によって、失踪の宣告を取り消さなければなりません。
この場合、失踪の宣告があってからその取消し前までの間に、その取り消しとなった原因(生きていることや、死亡の時期が
第31条の時期とは異なること)を知らず(=
善意)におこなった行為は、取り消されることはありません。
これはどういうことかというと、死亡したものとみなされていた失踪者が生きて出てきた場合は、当然その失踪宣告は取り消され、元通り生きているものとして扱われます。
また、死亡した時期が
第31条の時期と異なる場合は、相続の開始(
第882条)の時期が異なるということですから、利害関係が変わってくる可能性もあるため、その失踪宣告が取り消され、死亡の時期は、その死亡が証明された時期に変わります。
ただ、この場合、実は生きているということや、実は死んでいて、亡くなった時期が
第31条の時期とは異なるということを知らない(=
善意)者がおこなった行為は、取り消されることはない、ということです。
つまり本項は、事情を知らない第三者を保護する条文になります。
契約書作成実務における注意点
本項における「善意でした行為(=失踪者の生存情報、または実際の死亡時期が
第31条の死亡時期とは異なる、という事情を知らないこと)」は、契約においては、契約当事者双方共に事情を知らないことが要求されます(判例)。
つまり、契約当事者のどちらかが失踪者の事情を知っている場合は、本条にもとづいて、その契約が取り消されるおそれがあります。
例えば、失踪者が死亡したものとみなされたため、遺産を分割し、その相続分として不動産を相続した相続人と、その相続した不動産を売買する契約を結んだ場合で、売り手(相続人)か買い手のどちらか一方が、本項に抵触するような失踪者の情報を知っていたときは、その売買自体が取り消されることになります。
こうなってしまうと、後々の処理で大変なコストがかかってしまい、いいことはひとつとしてありません。
そのため、失踪者の情報を知っているのであれば、その利害関係人と契約を結ぶ前に、まずは家庭裁判所に申し立てて失踪宣告を取り消してもらい、しっかりと権利関係を確定してから契約を結びましょう。
また、遺産分割協議なども、死亡の時期が異なったり、ましてや生きていた場合はには、結果としていったん取り消すことになりますから、当然その処理は複雑極まることになります。
このような無用のコストを避けるためにも、失踪者の相続人であって、何らかの情報を知っている場合は、速やかに裁判所に申し立てましょう。
注意するべき契約書
失踪者の利害関係人が当事者となる
契約書全般。
特に、遺産の処理に関係する契約書。