条文
法人は、理事その他の代理人がその職務を行うについて他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
解説
法人の代表権者(理事・
第53条、仮理事・
第56条、特別代理人・
第57条、清算人・
第78条第1項参照。)がその職務をおこなった場合、他人に損害を与えたときは、法人は、その損害を賠償しなくてはなりません(
第709条)。
これはどういうことかというと、法人の代表権のある者が職務としておこなった行為は、それはすなわち法人の行為とされます。
ということは、その行為によって他人に損害を与えた場合は、当然法人にもその責任が及ぶ、ということです。
逆に言うと、職務にあたならない行為については、法人はその責任を負わなくてもいいことになります。
ただ、この「職務」に相当するかどうかという点については、画一的な基準が存在しないため、
第43条における「目的の範囲」と同じような問題が生じてきます。
本項においては、損害を被った被害者の保護の観点から、被害者から見て、職務をおこなっているような外観があれば、本項が適用されている場合が多いようです。
ちなみに、本項に相当する場合は、代表機関も、個人として
第709条による損害賠償の責任を負うことになり、法人と共に損害を賠償しなくてはいけません(判例)。
契約書作成実務における注意点
契約の相手方が法人であった場合、その契約を守らせるようにさせるには、最終的には、契約を結んだ代表権のある個人だけにではなく、法人そのものに責任が及ぶようにしなければなりません。
というのも、一般的には、個人よりも法人のほうが、契約の履行能力が高いとされているからです(特に財産的な部分)。
通常は、法人の代表権者が法人の代表者として契約した場合は、その法人と契約したこととなりますが、必ずしも全てそうとは限りません。
いくら法人の代表権者が法人の名義で契約しようとも、法人の職務とならないような行為をしてしまった場合は、本項によって、法人には責任が及びません。
確かに、上記のように、被害者側から見た外観によっては、代表権者の職務に該当する可能性もあります。
ただ、やはり明らかに代表権者の職務とは言えないような契約の場合は、法人への責任が追求できなくなる可能性があります。
特に、法人の代表権者の行為について、相手方が、その法人の代表権者の職務に該当しないということを知っていたか、知らないことについて、重大な不注意があった場合は、その法人は相手方に対して損害賠償責任を負わない、という判例もあるくらいです。
そうした点を踏まえて、契約の内容と法人の代表権者の職務とをよくよく考えたうえで契約を結びましょう。
注意するべき契約書
法人が当事者となっている
契約書全般。