民法第113条第2項(無権代理)の条文

第113条(無権代理)

1 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。




民法第113条第2項(無権代理)の解説

趣旨

本項は、無権代理の追認または追認の拒絶の効力について規定しています。

有効な代理権にもとづかない無権代理行為の追認または追認の拒絶については、相手方に対しておこなわなければ、その相手方に対して追認または追認の拒絶を主張することはできません。

ただし、相手方が本人の追認または追認の拒絶があった事実を知ったときは、本人は、その相手方に対して追認または追認の拒絶を主張することができます。

追認・追認の拒絶の効果

追認があった場合は、有効な代理行為として効力が発生し、本人にその効果が帰属します(第116条参照)。

また、追認の拒絶があった場合、第116条により有効な代理行為として効力が発生することはなくなります。

この点について、追認の拒絶は、第115条の取消しと同様の効果が生じます。

なお、無権代理の追認の拒絶(および第115条の取消し)があった場合、その相手方は、無権代理人に対し、履行または損害賠償の責任を追求することができます(第117条第1項参照)。

無権代理人に対する追認・拒絶と相手方に対する追認・拒絶

本項の「相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。」とは、言い換えれば、本人が無権代理人を含む相手方以外の者に対して追認またはその拒絶をおこなったとしても、相手方には、追認またはその拒絶を主張できない、ということです。

このような場合、相手方は、本人から追認またはその拒絶がなされるまでの間、または本人による追認またはその拒絶があった事実を知るまでの間、なお無権代理人との契約を取消すことができます(第115条)。

しかも、追認またはその拒絶の催告をおこなうこともできます(第114条)。

このように、本人にとっては、相手方以外(特に無権代理人)に対する追認またはその拒絶は、不完全なものとなります。

当然ながら、無権代理人に対して追認またはその拒絶をおこなった場合は、相手方にはできなとしても、無権代理人に対しては、追認またはその拒絶を主張することはできます。




契約実務における注意点

無権代理行為をされてしまった本人にとってみれば、無権代理行為があったこと自体が、すでにトラブル状態であるといえます。

ですから、本項にもとづいて追認なり追認の拒絶をおこなう場合は、慎重に手続きを進めなければなりません。

すでに述べたとおり、相手方以外(特に無権代理人)に対する追認またはその拒絶は、不完全なものとなります。

このため、実際に追認またはその拒絶をおこなう場合は、必ず相手方に対して直接おこなうようにします。

この際、証拠が残るように、一般書留の内容証明郵便により、書面でおこないます。

注意すべき契約書

  • 追認またはその拒絶の通知書