民法第98条第3項(公示による意思表示)の条文

第98条(公示による意思表示)

1 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。

2 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成8年法律第109号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも1回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

3 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

4 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。

5 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。




民法第98条第3項(公示による意思表示)の解説

趣旨

本項は、公示による意思表示の到達について規定しています。

公示による意思表示(第98条第1項第98条第2項参照)は、最後に官報に掲載した日、またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなします。

ただし、意思表示をする者が、相手方が誰であるかを知ることができないこと、または、その相手方がどこにいるのかを知ることができないことについて過失があったときは、意思表示の到達は効力を生じません。

みなし規定

本項はいわゆる「みなし規定」であるため、本項が適用される場合は、実際に相手方に到達していない場合であっても、公示から2週間後に到達したものとして扱います。

なお、通常の意思表示の場合は、相手方に直接通知し、到達することによって効果が発生します(第97条第1項参照)。




契約実務における注意点

通常の契約の場合、相手方が特定できない契約というのはあり得ませんので、契約を結ぶまでの段階では、本項は特に問題になることはありません。

ただし、契約を結んだ後に、相手方が特定できなくなった場合や、相手方の所在が明らかでなくなった場合は、本項にもとづき、公示により意思表示をおこないます。

本項により、実際に公示による意思表示がおこなわれると、その公示は、裁判所の掲示板や官報などに掲示されます。

本項の規定のとおり、公示による意思表示の場合、最短でも2週間の時間がかかってしまいます。

これでは、緊急事態などの場合には、事実上対応ができなくなる可能性もあります。

このため、契約の相手方の所在や連絡先は、常に把握しておく必要があります。

契約の内容によっては、相手方の住所や連絡先が変わった場合、通知義務を規定することもあります。

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