民法第136条第1項(期限の利益及びその放棄)の条文
第136条(期限の利益及びその放棄)
1 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
民法第136条第1項(期限の利益及びその放棄)の解説
趣旨
本項は、期限の利益について規定しています。期限は、債務者の利益のために定めたものと推定します。
一般的には、期限は、債務者の利益のために規定することが多いといえます。
このため、本項により、債務者の利益のための規定であると推定します。
ここでいう「債務者の利益」の「利益」とは、期限が到来するまで債務の履行を猶予されるという点で、「利益」であるということを意味します。
なお、期限は、必ずしも債務者のためだけの利益となるとは限りません(第136条第2項参照)。
推定規定
本項は、期限を「債務者の利益のために定めたものと推定する」、いわゆる「推定規定」です。
推定規定は、みなし規定とは異なり、反証がある場合は、この推定を覆えすことができます。
このため、期限が債務者以外の者または債務者と債権者双方の利益のために規定されている場合は、その証拠があるときは、債務者ではなく、その債務者以外の者または債務者と債権者双方の利益のために規定されたものとされます。
例えば、利息付きの金銭消費貸借契約書における返済期限は、「期限までは返済しなくてもいい」という債務者の利益であり、同じく、「期限までは利息を得ることができる」という債権者の利益でもあります。
契約実務における注意点
期限の利益は、契約実務のなかでも、非常に重要です。
契約の種類にもよりますが、特に、金銭の支払いや返済など、債務の履行についての規定は、いかにしてその期限の利益を規定するかがポイントとなります。
債権者(金銭の支払や返済をされる側など)にとっては、場合によっては、期限の利益を喪失させる必要があります。
このため、期限の利益を喪失させることができる事由を規定する条項、いわゆる「期限の利益の喪失」条項が重要となります。
他方、債務者(金銭の支払や返済をする側など)にとっては、期限の利益を喪失されると困ることが多いものです。
このため、いかに期限の利益を喪失させないか、また、期限の利益が喪失する事由を少なく抑えるか、という点が重要です(第137条参照)。
注意すべき契約書
- すべての契約書
- 金銭の支払いがともなう契約書
- 金銭消費貸借契約書