民法第147条(時効の中断事由)の条文
第147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
(1)請求
(2)差押え、仮差押え又は仮処分
(3)承認
民法第147条(時効の中断事由)の解説
趣旨
本条は、事項の中断事由について規定しています。
時効は、次の各号の事由によって中断します。
- 請求
- 差押え、仮差押えまたは仮処分
- 承認
中断とは
本条における「中断」とは、それまでに継続していた時効期間の計算が文字どおり中断されることです。
その後、中断が終了した場合は、再度最初から時効期間が計算されます(第157第1項・第157第2項参照)。
例えば、ある者が、15年間に渡って、所有の意思をもって、公然平穏に土地を占有した場合、本来であれば、残り5年で取得時効が成立します(第162第1項参照)。
しかし、本条に規定されている事由があった場合は、時効期間がリセットされてしまいます。
その結果、その事由があった時点から、新たに時効期間を起算しなおすことになります。
この点について、時効期間が10年よりも短い場合は、第174条の2第1項による特例がありますので、注意を要します。
なお、「停止」の場合は、中断とは異なり、一時的に時効の完成を猶予するものです。
このため、停止の事由が終了した場合は、それまでの時効期間から再度継続して時効期間が計算され、更新はされません(第158条1項以下参照)。
請求とは
本条における「請求」とは、次のものをいいます。
差押え、仮差押え又は仮処分とは
本条における「差押え、仮差押え又は仮処分」とは、それぞれ、次のとおりです(第154条・第155条参照)。
- 差押え 将来の強制執行のための債権の保全
- 仮差押え 将来の金銭債権の強制執行に備えた一部の財産権に対する権利の保全
- 仮処分 金銭債権以外の権利の保全
承認とは
本条における「承認」とは、時効の対象となっている権利義務が存在すること自体を表示することです(第156条参照)。
契約実務における注意点
本条は、時効により自己の権利が他人に取得されたり、自己の権利が消滅したりする場合に重要となる規定です。
現行の民法では、時効の成立を防止する方法は、本条以下の中断と第158条1項以下の停止しかありません。
従って、時効により自己の権利が他人に取得されたり、自己の権利が消滅したりする場合、本条以下の規定を利用して、時効の成立を防止することになります。
なお、本条以下にもとづく時効の中断は、適正な法的手続きを経ておこなわれるものです。
このため、手続きに関しては、専門家の判断を仰ぎながら慎重に進めるべきです。
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