民法第17条第4条(補助人の同意を要する旨の審判等)の条文

第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)

1 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。

2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。




民法第17条第4項(補助人の同意を要する旨の審判等)の解説

趣旨

本項では、被補助人の保護のための具体的な規定として、被補助人の法律行為の取消しを規定しています。

被補助人がおこなった法律行為のうち、補助人の同意を要するもの(第17条第1項第13条第1項各号参照)であって、補助人の同意を得ないでおこなったものは、後で取り消す(第120条第1項参照)ことができます。

本項は、物事の認識が不十分な被補助人を保護するための、具体的な条文になります。




契約実務における注意点

契約実務という点では、行為能力が制限されている被補助人との契約には、細心の注意を払う必要があります(ただし、日常生活に関するものは、第13条第1項ただし書きにより除外されています)。

というのも、どんなにしっかりとした契約書を作り、適正な手続で契約書に署名押印し、各種法律にもなんら抵触していない契約を結んだとしても、相手が被補助人である以上は、この規定によって、後で契約が取り消される可能性があります。

つまり、被補助人単独との契約は不完全な契約であり、それだけ被補助人との契約はリスクが高い、ということです。

もっとも、取消しのリスクがある契約は、第17条第1項により家庭裁判所の審判があった行為のみです。

このため、取消しのリスクがある行為は、限定されています。

なお、本項により制限される被補助人の行為は、後見登記等に関する法律第4条第1項第5号により、法務局に登記されます。

しかしながら、被補助人の契約の相手方は、その登記事項の証明書の交付を請求できないことになっています(補助人やその関係者はできます)。

つまり、被補助人の契約の相手方は、補助人の側に対して、登記事項の証明書の提示を求めることによってしか、本項にもとづき制限されている被補助人の行為の内容を知ることができません。

また、取消しのリスクを回避するには、補助人の同意(第17条第1項)または追認(第20条第2項参照)を得る必要があります。

これらの点から、被補助人との契約は、被後見人との契約と比べて、取消しのリスクを回避しやすいといえます。

なお、非常に厄介なことに、もし契約が取り消された場合は、被補助人は、「現に利益を受けている(これを「現存利益」といいます)限度において、返還の義務を負う」ことになります(第121条参照)。

例えば、ある人が、被補助人と金銭消費貸借契約(=いわゆる借金の契約)を結び、その被補助人に100万円を貸したとします。

その後、その被補助人が、借りた金のうち90万円をギャンブルで使ってしまい、さらにその後で、その金銭消費貸借契約が取り消した場合は、現存利益が10万円と判断されます。

この事例では、被補助人は、10万円しか返さなくてもいいということになります。

当然、貸し手は、90万円を丸損することになり、救済されることはありません。

このため、被補助人との契約は、単に契約が取り消されるリスクがあるたけではなく、取り消されることによる損害が発生する可能性もあります。

このため、より慎重に取消しのリスクを回避する必要があります。

注意すべき契約書

  • 金銭消費貸借契約書
  • (連帯)保証契約書
  • 不動産売買契約書(建物売買契約書・土地売買契約書)
  • 贈与契約書
  • 遺産分割協議書
  • 建設工事請負契約書
  • リフォーム工事請負契約書
  • 不動産賃貸借契約書(建物賃貸借契約書・土地賃貸借契約書)