民法第31条(失踪の宣告の効力)の条文
第31条(失踪の宣告の効力)
前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
民法第31条(失踪の宣告の効力)の解説
趣旨
本条は、失踪宣告の効力について規定しています。
第30条第1項の規定、つまり通常の失踪宣告を受けた者にあっては生死不明の期間が7年間満了した時に、第30条第2項の規定、つまり危機に遭遇した場合の失踪宣告を受けた者にあってはその危機が去った時に、それぞれ、死亡したものとみなします。
前者の通常失踪の場合は、死亡した時期が推測できないため、直近の7年間が満了した時期に死亡したものとみなします。
後者の特別失踪の場合は、死亡した時期は推測しにくいものの、少なくともその危機が去った時にはすでに死亡していた可能性が高いため、その危機が去った時をもって、死亡の時期とみなします。
みなし規定
本条は、失踪者を「死亡したものとみなす」、いわゆるみなし規定です。
このため、失踪者が生きていた場合であっても、失踪宣告が取り消されるまで(第32条第1項参照)は、民法上、失踪者は死亡しているものと扱われます。
遡及効
失踪宣告があった場合は、その宣告があった時点ではなく、生死不明の期間が7年間満了した時または危機が去った時に遡って失踪者が死亡したものとみなされます。
このため、生死不明の期間が7年間満了した時または危機が去った時から失踪宣告がなされるまでの間に失踪者に発生した法律関係は、無効となったり、失効したりする可能性があります。
契約実務における注意点
人の生死は多くの契約実務に関わってきますが、本条は死亡の時期を定めてますから、特に相続に関係してきます。
本条により失踪者は死亡したものとみなされますので、相続が開始(第882条)することになります。
なお、失踪宣告がなされた不在者が生きていた場合において、失踪宣告が取り消される前におこなわれた契約の効力は、必ずしも明らかではありません。
このため、失踪者が生きていたことが明らかになった場合は、直ちに失踪宣告の取消しをおこなうべきです。
注意すべき契約書
- 遺産分割協議書