民法第35条第1項(外国法人)の条文

第35条(外国法人)

1 外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

2 前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。




民法第35条第1項(外国法人)の解説

趣旨

本項は、外国法人の成立について規定しています。

外国法人は、国(国家そのもの)、国の行政区画(市町村や都道府県など)および、外国会社(一般の企業)以外は成立が認められません。

ただし、法律または条約の規定によって認許された外国法人は、成立が認められます。

外国法人は、日本法人と比べて、監督権限が及ばない可能性があります。

このため、外国法人の成立は、政府や地方公共団体のような行政機関、一般企業、そして法律や条約で特別に認許された外国法人に限って認められます。

なお、外国会社については、会社法の第6編(第817条〜第823条)に規定されています。

外国法人とは

外国法人とは、内国法人=日本法人=日本の準拠法で設立された法人以外の法人をいいます。

旧規定について

本項の内容は、2008年の民法改正以前は、旧民法第36条第1項の内容でした。また、本条は、2008年の民法改正以前は、社団法人・財団法人の名称の使用制限について規定されていました。なお、旧民法35条の規定は、次のとおりです。

旧民法35条(名称の使用制限)

社団法人又は財団法人でない者は、その名称中に社団法人若しくは財団法人という文字又はこれらと誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。




契約実務における注意点

本項は、契約実務においては、あまり問題になることはありません。

ただし、契約の相手方が本項により成立が認許されている外国法人でない場合は、注意を要します。

というのも、成立が認許されていない外国法人は、日本国内において私権を有していません(第35条第2項参照)。

このため、このような外国法人との契約は、有効に成立しない、または実際に契約書にサインした個人と結んだものとみなされてしまう可能性があります(ただし、契約の準拠法などによっては必ずしもこの限りではありません)。

このため、特に外国会社と取引する場合は、必ずその登記記載事項(第36条第37条第1項参照)を確認し、外国会社として登記されていることを確認のうえ、契約を結ぶべきです。

注意すべき契約書

  • 外国法人が当事者となっている契約書
  • 外国会社が当事者となっている契約書