民法第6条第1項(未成年者の営業の許可)の条文
第6条(未成年者の営業の許可)
1 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第4編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
民法第6条第1項(未成年者の営業の許可)の解説
趣旨:未成年者がおこなう営業に対する親権者の許可について規定
本項は、事業をおこなう未成年者の権利能力についての許可=制限の解除に関する規定です。
たとえ未成年者であったとしても、一種または数種の営業(事業をおこなうこと)を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同じように行為能力を有します。
この許可を与えることができるのは、未成年者の法定代理人(親権者または未成年後見人。一般的には親)です。
事業をおこなう未成年者は大人と同じ扱い
未成年者とはいえ、本項により許可を得た場合は、自由に単独で法律行為ができます。
ただし、その代わり、その事業に関しては、未成年者特有の民法による保護(第5条第1項参照)は、一切受けることができません。
なお、未成年者の法定代理人には、未成年者が営業をおこなうことについて、許可をできる権利があります(民法第823第1項)。
民法第823条(職業の許可)
1 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第六条第二項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
このため、未成年者は、法定代理人の許可がないと事業をおこなったり、起業したりすることができません。
ちなみに、未成年者が商法第4条の「営業」をおこなう場合は、登記をしなければなりません(商法第5条)。
商法第5条(未成年者登記)
未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。
引用元:商法 | e-Gov法令検索
許可は父母片方?父母両方?
なお、本項の許可は、父母の婚姻中は、原則として父母両方の同意が必要となります(民法第818条第3項参照)。
民法第818条(親権者)
1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
「成年者と同一の行為能力を有する」=法定代理権の消滅
本項でいう「成年者と同一の行為能力を有する」とは、法定代理人の同意を得る必要がないだけでなく、その法定代理人の法定代理権が許可を与えた範囲で消滅することを意味します。
このため、法定代理人は、営業の許可を与えた範囲内では、未成年者について代理権を行使できなくなります。
【補足】未成年者の概要
未成年者の概要 | |
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定義 | 18歳未満の成年でない者 |
単独でできない行為 | 原則としてすべての行為(例外に該当しないすべての行為) |
単独でできる行為 |
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単独行為の効果 | 取消し得る(民法第5条第2項) |
単独行為の取消権者 |
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主な保護者 |
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保護者の権限 |
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補足 | ― |
用語の定義
営業とは?
本項にいう営業とは、商業に限らず、営利目的の計画的・継続的になされる事業をいう(大審院民事部判決大正4年12月24日)。
一種又は数種の営業とは?
「一種又は数種の営業」とは、1個・1単位の営業の1個・1単位または数個・数単位の営業を意味します。
このため、部分的な許可については、本項でいう営業の許可には該当しません。
未成年者とは?
【意味・定義】未成年者とは?
未成年者とは、18歳未満の成年でない者をいう。
成年者とは?
【意味・定義】成年者とは?
成年者とは、成年となった者をいう。
行為能力とは?
法定代理人とは?
未成年者の法定代理人は、一般的には親権者(≒父母)が該当します(民法第818条、民法第819条)。
ただし、親権者がいない場合や、親権者に管理権がない場合は、未成年後見人が法定代理人となります(民法第838条)。
契約実務における注意点
未成年者が相手であっても事業上の契約はリスクが低い
本項により、たとえ相手方が未成年者であったとしても、その未成年者は、普通の未成年者に与えられている民法上の保護を受けることはできません。
契約を結ぶ際にも、完全に対等の立場で契約を結ぶことができます。
このため、未成年者と事業上の取引をする場合は、消費者としての未成年者と取引をする場合に比べて、リスクは低くなります。
契約書の署名欄の記載に気をつける
ただし、気をつけるべき点は、未成年者との事業上の契約の際の、契約書へのサインのしかたです。
この際は、必ず会社名(法人の場合)や屋号(個人事業者の場合)と肩書き(代表取締役など)と名前を書いてもらわなければなりません。
そうしないと、事業上の契約を締結したことにはならない可能性があります。
注意すべき契約書
- 未成年者が代表者となって当事者となるビジネス上の契約書
民法第6条第1項(未成年者の営業の許可)に関するよくある質問
- 民法第6条第1項(未成年者の営業の許可)はどのような規定ですか?
- 民法第6条第1項(未成年者の営業の許可)は、未成年者がおこなう営業に対する親権者の許可について規定した条項です。
- 「成年者と同一の行為能力を有する」とはどういう意味ですか?
- 「成年者と同一の行為能力を有する」とは、法定代理人の同意を得る必要がないだけでなく、その法定代理人の法定代理権が許可を与えた範囲で消滅することを意味します。