民法第85条(定義)の条文
第85条(定義)
この法律において「物」とは、有体物をいう。
民法第85条(定義)の解説
趣旨
本条は、物の定義について規定しています。
民法において、物とは、有体物、つまり形のある物をいいます。
例外として、生きている人間は有体物ですが、権利の対象となる「物」としては扱われません。
これは、人間を権利の対象となる物として認めてしまうと、人身売買、臓器売買、奴隷制などにつながり、人道上の問題があるからです。
ただし、生きている人間から分離した物や死体については、権利の対象となる「物」として取り扱われます。
この場合であっても、その取り扱いには、他の物よりも、慣習や法令による規制が強い傾向があります。
有体物とは
有体物が何であるかという議論は、学術的には様々な説があります。
実務的には、有体物とは、「排他的に支配ができる物」という認識で差し支えないものと思われます。
契約実務における注意点
本条は、民法での用語の定義に関する条文になりますので、契約実務においては、あまり問題になることはありません。
ただし、「物」の概念は、経済、産業、技術などの発展よって刻々と変わっていきます。
このため、各種特別法や、判例によっては、「物」の概念を広く解釈している場合があります(特に担保の設定に関する契約)。
この点については、注意が必要です。
また、最先端の技術を取り合う使う契約などでは、物の分解=リバースエンジニアリングや実験による消費など、物とそれに付帯する知的財産権(営業秘密など)の関係についてが問題となることもあります。
注意すべき契約書
- 動産譲渡担保設定契約書
- MTA=Material Transfer Agreement=マテリアルトランスファーアグリーメント契約
- 秘密保持契約