民法第88条第1項(天然果実及び法定果実)の条文
第88条(天然果実及び法定果実)
1 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
2 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
民法第88条第1項(天然果実及び法定果実)の解説
趣旨
本項は、天然果実の定義について規定しています。民法において、ある物の経済的な目的によって収取する産出物を、「天然果実」といいます。
これに対し、天然果実を生じさせる物を「元物」といいます。
物が天然果実に該当するかどうかの画一的な基準はありませんので、最終的には、裁判所の判断に委ねられます。
天然果実の具体例
一般的にいうところの「果実」(リンゴ、ナシ、ミカンなどの果物)は、果樹の天然果実に該当します。
この他、野菜、牛乳、羊毛、鉱石などは、それれぞれ、土地、乳牛、羊、鉱区(鉱山なと)の天然果実であるといえます。
なお、物の用法に「従わずに」収取された産出物は天然果実といえない可能性があります。
例えば、果樹ではなく、盆栽用の木から収取された梅の実は、天然果実とはいえない可能性があります。
タケノコは竹の天然果実?土地の天然果実?
ある土地にタケノコが生えてきた場合において、そのタケノコの根が隣の土地の竹とつながっていたときは、そのタケノコは、隣の竹の天然果実といえるのか、それとも土地の天然果実といえるのかが争われたケースがあります。
この点について、判例では、隣の土地から生えた竹を土地の天然果実としています(最高裁判決昭和35年11月19日)。
このため、隣の土地に生えている果樹の果物が土地の境界を超えた場合であっても、勝手に収取してはいけませんが、隣の土地に生えている竹が原因で「自分の土地」にタケノコが生えてきた場合は、勝手に収取しても差し支えないことなります。
契約実務における注意点
本項は、天然果実の定義を規定しただけの条項ですから、直接契約実務にかかわってくることはありません。
なお、具体的に天然果実が問題となる条項は、第89条第1項です。
注意すべき契約書
- 特に注意すべき契約書はありません。