民法第89条第1項(果実の帰属)の条文
第89条(果実の帰属)
1 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
2 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。
民法第89条第1項(果実の帰属)の解説
趣旨
本項は、天然果実の権利の帰属について規定しています。
天然果実(第89条第1項参照)は、元物(その果実を発生させる物)から分離する時点で、これを収取する権利のある者の物となります。
例えば、元物である果樹の果物については、収穫の際の分離の時点で、その果物を収穫する権利を有する者の所有物となります。
収取する権利を有する者とは
「収取する権利を有する者」とは、元物について権利を有する、次のような者をいいます。
天然果実の収取権がある者
- 所有権者(第206条)
- 地上権者(第265条)
- 永小作権者(第270条)
- 不動産の質権者(第356条)
- 賃借権者(第601条)
契約実務における注意点
他人の元物を借りて天然果実を収取するには、天然果実を収取する目的の契約を結ばなくてはなりません。
そうでなければ、天然果実を「収取する権利を有する者」とされません。
例えば、木材の伐採のために土地の賃貸借契約を結んでいる場合で、たまたまその土地から松茸が生えてきたからといって、勝手に収穫することはできません。
このため、賃貸借契約書や地上権設定契約などでは、土地などの貸借の対象となる元物の使用目的が重要となってきます。
上記の例では、土地の賃貸借契約書の土地の使用目的の条項に、「木材の伐採」としか書いていない場合は、その材木の果物や土地から生えてきた松茸の収穫はできません。
これに対し、使用目的の条項に、「果樹、山菜その他の木材または土地から算出する天然果実の収取」と書かれていれば、果実や松茸の収穫ができます。
注意すべき契約書
- 天然果実の収取を目的とする契約書