民法第93条第2項(心裡留保)の条文
第93条(心裡留保)
1 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
民法第93条第2項(心裡留保)の解説
趣旨
本項は、民法第93条第1項のただし書きにもとづく意思表示の無効について、善意の第三者を保護するための規定です。
本来であれば、心裡留保による意思表示は無効となります。
しかしながら、本項により、その意思表示が表意者の真意でないことを知らない第三者に対しては、無効であることを主張できません。
善意の第三者=事情を知らない第三者には冗談やウソは通じない
民法第93条第1項のただし書きによると、表意者の真意でないことを知っていた、または知ることができた場合は、意思表示は無効となります。
例えば、売主が冗談やウソで買主にある物の売買を持ちかけたとしても、買主が冗談やウソだと知っていた場合は、その売買は無効となります。
しかし、その売買の後で、買主が、売主による冗談やウソであることを知らない第三者(=善意の第三者)に対して、その物を転売した場合、本項により、ウソや冗談により無効であることを主張できなくなります。
用語の定義
意思表示とは?
【意味・定義】意思表示とは?
意思表示とは、「一定の法律効果の発生を欲する旨の意思の表明」(法務省民事局『民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-』p.35)をいう。
無効とは?
善意とは?
対抗することができないとは?
【意味・定義】対抗することができないとは?
対抗することができないとは、何らかの法的な効果について、(主に第三者に対して)主張できないことをいう。
改正情報等
新旧対照表
民法第93条第2項(心裡留保)新旧対照表 | |
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改正法 | 旧法 |
改正民法第93条(心裡留保) 1 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。 2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。 | 旧民法第93条(心裡留保) 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。 (新設) |
本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。
改正情報
従来の民法第93条では、特に善意の第三者の保護については、特に明文の規定はありませんでした。
ただ、判例(最高裁判決昭和44年11月14日)や学説では、心裡留保の表意者には責任があり、善意の第三者は保護するべきであるとされていました。
このため、善意の第三者は、従来は、民法第94条第2項を類推適用することで保護していました。
この法改正は、こういった内容を明文化したものです。