民法第97条第1項(意思表示の効力発生時期等)の条文

第97条(意思表示の効力発生時期等)

1 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。




民法第97条第1項(意思表示の効力発生時期等)の解説

趣旨

本項は、意思表示の到達主義について規定しています。

意思表示は、その通知が相手方に到達した時点からその効力を発生します。

このように、意思表示の到達によって効力が発生することを到達主義といいます。

例えば書面で意思表示をする場合は、その書面を発送した時点ではなく、その書面が相手方に到達した時点で効力を発生します。

「到達」とは

本項における到達とは、意思表示または書面が相手方の「了知可能の状態におかれたこと」(最高裁判決昭和36年4月20日)や「いわゆる支配圏内に置かれること」(最高裁判決昭和43年12月17日)とされています。

このため、特に相手方がその意思表示を書面そのものの内容を確認することまでは要求されていません。

これは、受領を拒絶した場合であっても、同様に到達したものとみなされます(大審院民事部判決昭和11年2月14日)。




用語の定義

意思表示とは?

【意味・定義】意思表示とは?

意思表示とは、「一定の法律効果の発生を欲する旨の意思の表明」(法務省民事局『民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-』p.35)をいう。




改正情報等

新旧対照表

民法第97条(意思表示の効力発生時期等)新旧対照表
改正法旧法

改正民法第97条(意思表示の効力発生時期等)

1 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し
意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

旧民法第97条(隔地者に対する意思表示)

1 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

(新設)

2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。

改正情報

旧民法第97条第1項は、隔地者に対する意思表示に限定して規定されていました。

ただ、意思表示について隔地者とそうでない者を区別して、隔地者だけを到達主義とする合理的な理由はありません(通説)。

このため、この改正で、隔地者に対するもののみならず、すべての意思表示を到達主義としました。