民法第106条第1項(復代理人の権限等)の条文

民法第106条第1項(復代理人の権限等)

1 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

2 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。




民法第106条第1項(復代理人の権限等)の解説

趣旨

復代理人はあくまで復代理権の範囲内で本人を代理する

本項は、復代理人の権限について規定しています。

復代理人は、その権限内の行為について、(代理人ではなく)本人を代理します。

本項の場合の「代表」は、代理のことです。

つまり、復代理人は、あくまで復代理権の範囲内での行為しかできません。

なお、復代理人と代理人は、ともに本人を代理します(大審院民事部判決大正10年12月6日)。

復代理人の代理権は代理人の代理権の範囲内

復代理人が代理人よりも広い範囲の代理権を有することは、理論上あり得ません。

このため、復代理権の範囲は、最大でも、代理人の代理権の範囲と同一です。

具体的な復代理権の範囲は、代理人と復代理人との委任契約において決定されます。

なお、復代理人の選任は代理人よる復代理人に対する代理権の譲渡ではありません。

このため、復代理人を選任したからといって、代理人の代理権は消滅しません。




改正情報等

新旧対照表

民法第106条(復代理人の権限等)新旧対照表
改正法旧法

改正民法第106条(復代理人の権限等)

1 (略)

2 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

旧民法第107条(復代理人の権限等)

1 (同左)

2 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。

正確には、旧第105条が削除された関係で、旧第107条が改正第106条に繰り上げられました。

改正情報

本項は、特に改正されておりません。




契約実務における注意点

本項は、代理行為における内部的な関係に関する規定ですから、原則として、契約実務では問題になりません。

ただ、上記の問屋営業に関連して、代理店契約などの類似する契約書においては、代理権の有無を明記しておく必要があります。

なお、本項にもとづいて、本人は、代理人を介さずに、復代理人に対して、直接義務の履行を求めることができます(最高裁判決昭和51年4月9日)。

注意すべき契約書

  • 代理店契約書