民法第106条(法定代理人による復代理人の選任)の条文
民法第106条(法定代理人による復代理人の選任)
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第1項の責任のみを負う。
民法第106条(法定代理人による復代理人の選任)の解説
趣旨
法定代理人は自由に復代理人を選任できる
本条は、法定代理人による復代理人の選任について規定しています。
法定代理人は、自己の責任で自由に復代理人を選任することができます。
この場合、やむをえない事由があるときは、第105条第1項の責任のみを負います。
法定代理人は、法律にもとづき、裁判所などの第三者にから半ば強制的に指定され、原則としてこれを断ることができません。
その反面、自己の責任で自由に復代理人を選任することができます。
法定代理人は復代理人について一定の責任を負う
ただ、いくら自由に復代理人を選任することができるとはいえ、法定代理人は、復代理人の行為について、一切の責任(選任・監督の責任に限りません)を負わなければなりません。
この責任については、過失の有無を問いません。
また、やむをえない事由によって復代理人を選任した場合は、復代理人の選任・監督について、第105条第1項にもとづいた責任のみを負わなければなりません。
任意代理人は原則として復代理人を選任できない
これに対し、任意代理人は、復代理人を選任できません。
任意代理の場合、双方の自由意思にもとづいて、本人と代理人との委任契約の締結を決定することができます。
言い方を変えれば、任意代理人は、その就任を断ることもできます。
つまり、任意代理人は、就任を断ることができる反面、原則として、復代理人を選任することができません(第104条参照)。
民法改正情報
本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以下のように改正されます。
削除される現行の第105条第1項、第105条第2項に代わって、改正後の本条がスライドし、改正後の第105条になる形になります。
現行法
民法第106条(法定代理人による復代理人の選任)
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第1項の責任のみを負う。
改正法
民法第105条(法定代理人による復代理人の選任)
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
契約実務における注意点
本条により、任意代理と比べて、法定代理人は、比較的自由に復代理人を選任することができます。
その反面、本人に対する責任は、法定代理人のほうが、任意代理人よりも重くなります。
このため、復代理人を選任する場合、法定代理人は、任意代理人の立場に比べて、より慎重に復代理人を選任しなければなりません。
というよりも、できれば、復代理人など選任せずに、すべての行為をおこなうべきです。
なお、復代理人との復委任契約書においては、代理人が復代理人を監督できる規定を明記しておきます。
これは、復委任契約書にもとづいて復代理人を監督できなければ、代理人としては、本条の監督義務を果たすことができないからです。
注意すべき契約書
- 復代理人との復委任契約書