民法第5条第2項(未成年者の法律行為)の条文

第5条(未成年者の法律行為)

1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。




民法第5条第2項(未成年者の法律行為)の解説

趣旨

本項では、未成年者の保護のための具体的な規定として、未成年者の法律行為取消しを規定しています。

前項(第5条第1項参照)の規定に反しておこなった法律行為(=契約など)は、後で取り消すことができます(第120条第1項参照)。

つまり、法定代理人の同意を得ずにおこなった未成年者単独の法律行為は、後で取り消すことができる、ということです。

本項は、民法上は判断力が備わっていないものと取り扱われている未成年者を保護するための具体的な条文です。




契約実務における注意点

契約実務という点では、行為能力が制限されている未成年者との契約には、細心の注意を払う必要があります。

というのも、どんなにしっかりとした契約書を作り、適正な手続で契約書に署名押印し、各種法律にもなんら抵触していない契約を結んだとしても、相手が未成年者である以上は、この規定によって、後で契約が取り消される可能性があります。

つまり、未成年者単独との契約は不完全な契約であり、それだけ未成年者との契約はリスクが高い、ということです。

このリスクを回避するには、法定代理人の同意(第5条第1項参照)や追認(第20条第2項参照)を得る必要があります。

当然、それだけのコストがかかることになります。

また、同意や追認を得ることができないうリスクもあります。

さらに、非常に厄介なことに、もし契約が取り消された場合は、未成年者は、「現に利益を受けている(これを「現存利益」といいます。)限度において、返還の義務を負う」ことになります(第121条参照)。

例えば、ある人が、未成年者と金銭消費貸借契約(=いわゆる借金の契約)を結び、その未成年者に100万円を貸したとします。

その後、その未成年者が、借りた金のうち90万円をギャンブルで使ってしまい、さらにその後に、その金銭消費貸借契約が取り消した場合は、現存利益が10万円と判断されます。

この事例では、未成年者は、10万円しか返さなくてもいいということになります。

当然、貸し手は、90万円を丸損することになり、救済されることはありません。これほどのリスクがあるのですから、未成年者を初めから契約の相手としないことも検討しなければなりません。

また、未成年者の親(他の法定代理人も含む)は、その未成年者が単独で結んだ契約は、本項をもとにして取り消すができます。それだけ未成年者は強力に保護されているということです。

注意すべき契約書

  • 未成年者が当事者となる契約書全般
  • 未成年者を対象としたホームページ・ウェブサービス・アプリ等の利用規約