民法第174条の2第1項(判決で確定した権利の消滅時効)の条文
第174条の2第1項(判決で確定した権利の消滅時効)
1 確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
民法第174条の2第1項(判決で確定した権利の消滅時効)の解説
趣旨
本項は、判決で確定した権利の消滅時効について規定しています。
確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とします。
また、裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様にその時効期間は10年とします。
つまり、裁判によって判決が確定した場合などには、10年よりも短い時効期間の債権についての時効期間を10年に延長できる、ということです。
このため、確定判決を得ることは、短期消滅時効の時効期間の延長というメリットがあります。
確定判決と同一の効力を有するものとは
本項における「裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するもの」とは、確定判決以外の、確定判決と同一の効果がある法的手続きのことです。
具体的には、次のものをいいます。
- 和解または請求の放棄もしくは任諾調書への記載(民事訴訟法第267条)
- 支払督促の確定(民事訴訟法第396条)
- 調停調書への記載(民事調停法第16条・家事審判法第21条)
- 仲裁判断の確定(仲裁法第45条第1項)
- 破産債権表への記載(破産法第124条第3項・同第221条第1項)
契約実務における注意点
消滅時効は、契約にもとづく権利義務が消滅する制度であるため、契約実務上は重要です。
特に、本条は、短期消滅時効(第169条以下参照。)の時効期間を延長させることができる規定として、非常に重要な規定であるといえます。
もっとも、実際に訴訟を起こすことによって確定判決を得るには、相応のコストがかかります。
このため、契約実務上は、よりコストがかからない上記の手続き(確定判決と同一の効力を有するもの)を活用することもあります。
なお、裁判はいうまでもありませんが、その他の上記の手続についても、専門知識が必要な手続きですので、弁護士や司法書士などの専門家の判断を仰ぎながら慎重に進めるべきです。
注意すべき契約書
- 短期消滅時効に該当する債権のある契約書