民法第169条第1項(判決で確定した権利の消滅時効)の条文
第169条(判決で確定した権利の消滅時効)
1 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
民法第169条第1項(判決で確定した権利の消滅時効)の解説
趣旨:確定判決等による権利の消滅時効は一律で10年間
本項は、確定判決等で確定した権利の消滅時効について規定しています。
確定判決等によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年となります。
つまり、裁判によって判決が確定した場合などには、10年よりも短い時効期間の債権についての時効期間を10年に延長できる、ということです。
このため、確定判決を得ることは、消滅時効の時効期間を延長できる、というメリットがあります。
「確定判決と同一の効力を有するもの」とは?
本項における「確定判決と同一の効力を有するもの」とは、確定判決以外の、確定判決と同一の効果がある法的手続きのことです。
具体的には、次のものをいいます。
確定判決と同一の効力を有するもの
- 和解または請求の放棄もしくは任諾調書への記載(民事訴訟法第267条)
- 支払督促の確定(民事訴訟法第396条)
- 調停調書への記載(民事調停法第16条・家事審判法第21条)
- 仲裁判断の確定(仲裁法第45条第1項)
- 破産債権表への記載(破産法第124条第3項・同第221条第1項)
改正情報等
新旧対照表
民法第169条(判決で確定した権利の消滅時効)新旧対照表 | |
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改正法 | 旧法 |
改正民法第169条(判決で確定した権利の消滅時効) 1 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。 2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。 | 旧民法第169条(定期給付債権の短期消滅時効) 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。 |
本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。
改正情報
改正民法第169条第1項は旧民法第174条の2第1項からの移行
本項は、旧民法第174条の2第1項から移行されたものです。
内容については、実質的な変更はありません。
旧民法第174条の2(判決で確定した権利の消滅時効)
1 確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
改正民法第166条第1項第1号の「知った時から5年」により削除
旧民法第169条は、消滅時効の一般原則として改正民法第166条第1項第1号において、「知った時から5年」の主観的起算点が新設されたことから、削除されました。
契約実務における注意点
消滅時効は、契約にもとづく権利義務が消滅する制度であるため、契約実務上は重要です。
特に、本条は、消滅時効の時効期間を延長させることができる規定として、非常に重要な規定であるといえます。
もっとも、実際に訴訟を起こすことによって確定判決を得るには、相応のコストがかかります。
このため、契約実務上は、よりコストがかからない上記の手続き(確定判決と同一の効力を有するもの)を活用することもあります。
注意すべき契約書
- 短期消滅時効に該当する債権のある契約書