民法第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)の条文

第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(1)仮差押え

(2)仮処分




民法第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)の解説

趣旨:仮差押え・仮処分は時効の完成猶予事由

本条は、仮差押え等があった場合における時効の猶予について規定しています。

時効は、次の各号の事由(完成猶予事由)によって、その事由が終了時から6ヶ月後まで、完成が猶予されます。

仮差押え等による時効の完成猶予の事由
  • 仮差押え
  • 仮処分

仮差押え・仮処分では、時効の完成猶予にとどまり、それ単体では時効の更新にはなりません。

仮差押えとは?

【意味・定義】仮差押えとは?

仮差押えとは、将来の金銭債権の強制執行に備えた一部の財産権に対する権利の保全をいう。

仮処分とは?

【意味・定義】仮処分とは

仮処分とは、金銭債権以外の権利の保全をいう。




用語の定義

完成(時効)とは?

【意味・定義】完成(時効)とは?

時効制度における完成とは、時効の期間が満了することをいう。

完成猶予(時効)とは?

【意味・定義】完成猶予(時効)とは?

時効制度における完成猶予とは、特定の事由が存在する間に、時効は進行するものの、時効の完成が一定期間は猶予されることをいう。




改正情報等

新旧対照表

第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)新旧対照表
改正法旧法

改正第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(1)仮差押え

(2)仮処分

旧第149条(裁判上の請求)

裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。

改正情報

「中断」「停止」から「完成猶予」「更新」へ

旧民法では、時効について、「中断」という用語が使われていました。

この「中断」は、改正後の「完成猶予」と「更新」の両方の意味で使われており、非常に理解しづらいものでした。

このため、平成29年改正民法では、時効制度全般において、「中断」の用語の意味を整理し、内容に応じて、「完成猶予」と「更新」に改めました。

「停止」から「完成猶予」へ

旧民法における時効の「停止」については、あたかも時効の進行そのものが停止するかのような誤解の原因となりかねないものでした。

このため、こちらも併せて「完成猶予」という表現に改められています。

旧民法第149条は改正民法第147条第1項柱書のかっこ書きへ移行

旧民法第149条の内容は、改正民法第147条第1項柱書のかっこ書きにおいて規定されました。

これにより、本条は削除のうえ、差押え等(旧民法第147条)の時効の完成猶予事由について、新設されました。

旧第147条(時効の中断事由)

時効は、次に掲げる事由によって中断する。

(1)請求

(2)差押え、仮差押え又は仮処分

(3)承認