民法第157条第1項(中断後の時効の進行)の条文
第157条(中断後の時効の進行)
1 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。
民法第157条第1項(中断後の時効の進行)の解説
趣旨
本項は、中断後の時効の進行について規定しています。
中断した時効は、その中断の事由が終了した時点から、新たにその進行を始めます。
ただし、裁判上の請求により中断した時効については、第157第2項の例外があります。
本項により、時効が中断すると、それまでの期間が更新されて、最初から時効期間を計算しなおすことになります。
例えば、ある者が、15年間に渡って、所有の意思をもって、公然平穏に土地を占有した場合、本来であれば、残り5年で取得時効が成立します(第162第1項参照)。
しかし、時効が中断されると、時効期間がリセットされてしまいます。
その結果、中断の事由が終了した時点から、新たに20年間の時効期間を起算しなおすことになります。
この点について、時効期間が10年よりも短い場合は、第174条の2第1項による特例がありますので、注意を要します。
なお、「停止」の場合は、中断とは異なり、一時的に時効の完成を猶予するものであり、停止の事由が終了した場合は、それまでの時効期間から再度継続して時効期間が計算され、更新はされません(第158条1項以下参照)。
中断の事由が終了した時とは
本項における「中断の事由が終了した時」とは、それぞれの時効中断事由につき、次のとおりです。
- 支払督促(第150条参照) 仮執行が終わった時点(訴訟になった場合は第157第2項参照。)
- 和解>または調停への出頭またはその成立(第151条参照) 出頭による弁論の終了の時点
- 破産手続への参加(第152条参照) 破産手続の終了
- 再生手続への参加(第152条参照) 再生計画認可決定の確定の時点
- 更生手続への参加(第152条参照) 更正計画認可決定の確定の時点(最高裁判決昭和53年11月20日)
- 催告(第153条参照) それ単体では時効は中断するものの終了はしない
- 差押え、仮差押えまたは仮処分(第154条・第155条参照) それぞれの手続の終了
- 承認(第156条参照) 承認が相手方に到達した時点
契約実務における注意点
すでに述べたとおり、時効の中断があった場合は、それまでの時効期間は、すべてリセットされます。
本項により、時効の中断があった場合は、時効により利益を得る者にとっては、それまでの苦労が報われないことになります。
他方で、時効により損害を被る者にとっては、自己の権利が守られることになります。
このため、時効により利益を得る者にとっては、いかにして時効の中断を防ぐかが重要となります。
これに対し、時効により損害を被る者にとっては、いかにして時効を中断させるかが重要となります。
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