民法第102条(代理人の行為能力)の条文
第102条(代理人の行為能力)
代理人は、行為能力者であることを要しない。
民法第102条(代理人の行為能力)の解説
趣旨
制限行為能力者でも代理人になれる
本条は、代理人の行為能力の要否について規定しています。
代理人は、行為能力者である必要はありません。
つまり、制限行為能力者(第20条第1項参照)であっても、代理人となることができます。
代理行為による利益・不利益は本人の問題
そもそも、制限行為能力者の制度は、制限行為能力者を保護するための制度です。
また、代理行為によってその効果が帰属するのは本人であり、代理人ではありません。
そして、代理行為により利益を享受する、または不利益を被る者も本人です。
他方、制限行為能力は、代理行為により、なんら利益を享受することもなければ、不利益を被ることもありません。
当然ながら、代理行為については、特に制限行為能力者を保護する必要もありません。
従って、代理人の要件として、行為能力は必要とされていません。
本条は、むしろ、制限行為能力者が代理人となった場合の相手方を保護するための規定です。
民法改正情報
本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以下のように改正されます。
現行法
第102条(代理人の行為能力)
代理人は、行為能力者であることを要しない。
改正法
第102条(代理人の行為能力)
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
契約実務における注意点
制限行為能力者を代理人にするのは避けるべき
本条により、制限行為能力者を代理人とすることができます。
しかし、よほど特殊な事情がない限り、契約交渉において制限行為能力者を代理人とすることは、なるべく避けるべきです。
というのも、制限行為能力者は、行為能力者に比べて、判断力が不十分であるとされています。
このため、不利な内容の契約を結んでします可能性が十分にあります。
仮に不利な内容での契約を結んでしまった場合であっても、本条により、その不利な内容の契約を受け入れなければならなくなります。
必ずしも行為能力者だから代理人にしていいわけではない
もっとも、行為能力者であればなんら問題がないかというと、必ずしもそうであるとはいえません。
あくまで、代理人とする者の選定にあたっては、代理人の資質・能力により判断するべきです。
従って、代理人を選定する場合は、法的な効果がどうこうという以前の問題として、より有利な契約を結ぶために、制限行為能力者ではなく、資質・能力のある行為能力者を代理人として選定するべきです。
注意すべき契約書
- 代理人との委任契約書