民法第99条第1項(代理行為の要件及び効果)の条文
第99条(代理行為の要件及び効果)
1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
民法第99条第1項(代理行為の要件及び効果)の解説
趣旨
本項は、代理行為の要件と効果について規定しています。
代理人がその権限の範囲内で本人のためにすることを示しておこなった意思表示は、本人に対して直接にその効力を生じます。
なお、「直接に」とは、法律行為の効果が代理人に帰属した後に本人に効果が帰属するのではなく、直接、当然に本人に効果が帰属することを意味します。
法定代理人と任意代理人
法定代理人とは、本人の意思にもとづかないで、法律によって代理権が発生する代理=法定代理によって代理権が発生する代理人のことです。
任意代理人は、委任契約により、本人と代理人との合意により代理権が発生する代理人のことです。
代理人の権限について
代理人の権限は、法定代理人と任意代理人により、範囲がことなります。
法定代理人の場合、その権限(代理権)の範囲は、法律によって決まっています。
任意代理人の場合、その権限(代理権)の範囲は、委任契約の内容によって決まります。
顕名主義とは
本人のためにすることを示すことを「顕名」といいます。
民法上、顕名があることが、有効な代理行為の要件のひとつです。
このように、代理の要件として顕名を要することを「顕名主義」といいます。
ここでいう「本人のためにすること」とは、本人に法律行為の効果を帰属させることであり、本人の利益のためにおこなうということではありません。
このため、代理行為が結果的に本人にとって不利益になったとしても、その結果は本人に帰属します。
なお、顕名のない意思表示は、代理人自らの意思表示とみなされます(第100条参照)。
契約実務における注意点
代理人に何らかの行為を任せる任意代理の場合、本人は、代理人を選任し、その代理人に何らかの行為をおこなう権限を委任することになります。
この際、代理人に対して付与する権限とその範囲を決定して、委任契約書で明確に規定する必要があります。
代理権の範囲を明確に規定していないと、代理行為が代理権の範囲かどうかを巡って、代理人との間でトラブルが発生する可能性があります。
この点について、代理権の範囲をまったく定めない(=すべて任せてしまう)ことを、いわゆる「白紙委任」いいます。
そして、白紙委任をおこなう際に代理人に交付する委任状がいわゆる「白紙委任状」です。
この白紙委任状を交付してしまった場合、すべてのことについて代理人に任せてしまうことになりますから、代理人にどんなことをされてしまっても、文句が言えなくなります。
なお、貸金業者による白紙委任状の取得は禁止されています(貸金業法第20条)。
注意すべき契約書
- 代理権の設定を伴う代理人との委任契約書
- 委任状