民法第98条の2(意思表示の受領能力)の条文
第98条の2(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
民法第98条の2(意思表示の受領能力)の解説
趣旨
未成年者・成年被後見人は意思表示の受領能力がない
本項は、意思表示の受領能力について規定しています。
意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時点で未成年者(第5条第1項参照)または成年被後見人(第7条参照)であった場合は、意思表示をした者は、その相手方に対してその意思表示を主張することはできません。
ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、その相手方に対してその意思表示を主張することができます。
未成年者・成年被後見人の側から意思表示の受領の主張はできる
本項により、意思表示をした側は、未成年者や成年被後見人に対しては、意思表示をしたことを主張できません。
ただし、逆に未成年者や成年被後見人の側から意思表示をしたことを主張することは差し支えありません。
つまり、意思表示をした側としては、自らは意思表示の受領を主張できませんが、意思表示を受けた側は、意思表示の受領を主張できます。
このため、未成年者・成年被後見人が相手方の場合は、意思表示をする側は、一方的に不利な立場になります。
本条は被保佐人・被補助人には適用されない
なお、本項では、制限行為能力者のうち、未成年者と成年被後見人についてのみ規定しています。
このため、被保佐人(第12条参照)と被補助人(第15条第1項参照)に対しては、通常の行為能力者と同じように、意思表示を受領を主張することができます。
「法定代理人」とは
本項における法定代理人とは、未成年者にあっては親権者(一般的には親)または未成年後見人、成年被後見人にあっては成年後見人を意味します。
一般的な法定代理人の意味・定義につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
民法改正情報
本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以下のように改正されます。
現行法
第98条の2(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
改正法
第98条の2(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。
(1)相手方の法定代理人
(2)意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
契約実務における注意点
本項により、未成年者や成年被後見人に対して意思表示をしても、その意思表示が否定されてしまう可能性があります。
このため、契約実務においては、制限行為能力者に対する意思表示は、制限行為能力者の法定代理人に対しておこなうべきです。
また、被保佐人や被補助人に対する意思表示も、被保佐人や被補助人だけでなく、保佐人や補助人に対してもおこなうべきです。
被保佐人や被補助人は意思表示の受領は制限されていませんが、相手方からの法律行為には、保佐人や補助人の同意が必要となってくる場合が多いからです。
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