民法第145条(時効の援用)の条文

第145条(時効の援用)

時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

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民法第145条(時効の援用)解説

趣旨

本条は、時効の援用について規定しています。

当事者が時効を援用しなければ、裁判所がその時効が援用できることを知っていたとしても、この時効によって勝手に裁判をおこなうことができません。

本条により、当事者が時効の援用(時効の利益を受ける旨の主張すること)をしない限り、裁判所が勝手にその時効の効果を発生させて判決を下すことはできません。

以上のように、時効の援用は、当事者の意思に委ねられています。

すべての当事者が必ずしも時効の援用を希望するとは限らないため、本条が規定されました。

なお、時効の援用が信義則(<第1第2項参照)に反し、権利の濫用(第1第3項参照)に該当するという判例があるため、安易な時効の援用は避けるべきです。

当事者とは

本条における「当事者」とは、時効の援用によって利益を享受できる者をいいます。

当然ながら、取得時効により権利を取得できる者、消滅時効で債務が消滅する者など、直接利益を享受できる者は、当事者に該当します。

他方では、間接に利益を受ける者は当事者ではないとされています(大審院判決明治43年1月25日、最高裁判決昭和48年12月14日)。

この他にも、判例では、次のような者が当事者とされています。

民法第145条における「当事者」の具体例・判例

  1. 保証人(大審院判決昭和8年10月13日)
  2. 連帯保証人(大審院判決昭和7年6月21日)
  3. 不動産を譲渡担保に提供した者(最高裁判決昭和43年9月26日)
  4. 他人の債務のために不動産に抵当権を設定した者(最高裁判決昭和43年9月26日)
  5. 抵当不動産の転得者(最高裁判決昭和48年12月14日)
  6. 売買予約の仮登記がなされている不動産の転得者(最高裁判決平成4年3月19日)

契約実務における注意点

契約実務において、時効制度そのものは、あまり問題とはなりません。

時効が問題となる状況では、すでに契約上の信頼関係は存在しないことが多いといえます。

このような状況であれば、どのように契約書を作っていようとも、もはやどうにかなるものではないからです。

また、そもそも、時効の規定のほとんどは任意代理であり、当事者の合意のである契約よりも優先されます。

このため、契約にどのような規定があろうとも、あまり意味があません。

もっとも、契約書は、時効を援用する側・援用しない側双方にとって、本条における「当事者」の証拠となりますので、特に消滅時効を援用することができる債務者の場合は、長期間保存しておくべきものではあります。

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