民法第118条(単独行為の無権代理)の条文
第118条(単独行為の無権代理)
単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第113条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
民法第118条(単独行為の無権代理)の解説
趣旨
本条は、単独行為の無権代理について規定しています。
単独行為の無権代理については、その行為の時点で、相手方が、自称代理人が無権代理行為をすることに同意し、またはその代理権を争わなかった場合に限り、第113条第1項から第117条第2項第117条第2項までの規定を準用します。
無権代理人に対し、その同意を得て単独行為をした場合も、第113条第1項から第117条第2項第117条第2項までの規定を準用します。
単独行為とは
本条でいう「単独行為」とは、契約の解除、契約の申込み、契約の申込みに対する承諾、同意、取消し、契約の解除、債務の免除(第519条)、遺言のように、単独の当事者による単独の意思表示によって効果が発生する法律行為です。
単独行為は、必ずしも相手方がいる必要はありません(遺言は相手方がいない単独行為)。通常の代理行為にように、双方の意思表示によって効果が発生する行為とは性質が異なります。
前段の具体例
本条前段は、無権代理人が単独行為をおこなう場合の規定です。
本条前段の具体例として、本人A、相手方B、Aの無権代理人Cとして、契約の解除の場合は、次のとおりとなります。
AとBとの契約について、Cが勝手にBに対して契約の解除を申し出た場合、BがCによる契約の解除が無権代理であることに同意し、またはCに代理権がないことを争わなかった場合は、無権代理に関する規定である第113条第1項から第117条第2項第117条第2項までの規定が適用されます。
この結果、Aとしてみれば、勝手にCに無権代理行為をおこなわれたことになりますが、その無権代理行為の内容によって、追認または追認の拒絶を選択することができます(第113条第1項・第116条参照)。
また、追認を拒絶した場合は、無権代理人であるCに責任を負わせることもできます(第117条第1項参照)。
このように、本条のような状況は、本人であるAにとっては、格別リスクになることはありません。
後段の具体例
本条後段は、無権代理人が単独行為を受ける場合の規定です。
本条後段の具体例として、本人A、相手方B、無権代理人Cとして、契約の解除の場合は、次のとおりとなります。
AとBとの契約について、Bが勝手にAから付与された代理権がないCに対して契約の解除を申し出た場合、BがCにAから付与された代理権がないことに同意し、またはCに代理権がないことを争わなかった場合は、無権代理に関する規定である第113条第1項から第117条第2項第117条第2項までの規定が適用されます。
結果については、前段の場合と同様です。
契約実務における注意点
契約実務において、単独行為による契約の処理を無権代理人からおこなわれる場合や、単独行為による契約の処理を無権代理人対しておこなう場合というのは、あってはならないことです。
契約実務における単独行為は、すべて重要な意味をもっているため、本人に対しておこなわれるか、または有効な代理権が確認できた代理人に対しておこなわれるべきものです。
本条が適用されるような状況では、本人は第113条第1項から第117条第2項第117条第2項までの規定により一定の保護を受けることができるものの、相手方の場合、必ずしも保護を受けることができるわけではりません。
特に、本人に対する取消権が制限されたり(第115条参照)、無権代理人に対する責任の追求ができなかったりするなどの問題があります(第117条第2項第117条第2項参照)。
このため、代理人を相手方に単独行為をおこなう場合であっても、通常の契約交渉と同じように、委任状(なるべく本人の印鑑登録証明書も併せて)を提示してもらい、有効な代理権があるかどうかを確認するべきです。
注意すべき契約書
- 委任状