民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)の条文

民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)の条文

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

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民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)の解説

趣旨―「不動産の物権変動=登記」の大原則

本条は、不動産に関する物権変動の第三者への対抗要件が登記であるという、大原則を規定したものです。

「第三者に対抗することができない」とは、第三者に対して、「物権の得喪及び変更」を主張できない、ということです。

本条は、民法第2章の「物権」の規定において、最も有名であり、かつ最も重要な規定です。

「不動産」とは

民法における不動産とは?

民法における不動産は、第86条第1項にあるとおり、「土地及びその定着物」とされています。

不動産の定義

民法において、「不動産」とは、土地および建物・立木・橋・石垣等の土地の定着物をいう。

ただし、本条における不動産は、若干意味合いがことなります。

民法第177条における不動産とは?

本条における不動産は、土地・建物と、土地の定着物のうち、独立したもの(≒登記できるもの)に限ります。

独立した土地の定着物の代表例は、登記された立木です。

立木は、立木法(立木ニ関スル法律)第2条によって、登記できます。

逆に、土地の定着物のうち、登記できないもの(機械・橋・溝・石垣など)の物権の変動は独立せずに、土地の上の物権の変動によります。

「建物」とは

建物の定義については、民法上、必ずしも明らかではありません。

このため、建築途中の建物が、どの程度まで施行が進んだ段階で建物に該当するかは、必ずしも明らかではありません。

この点について、過去の判例では、次のとおり判示されています。

建物の完成度に関する判例

  • 木材を組み立てて土地に定着させ、屋根を拭き上げたもの=建物とはいえない(大審院判決大正15年2月22日)
  • 単に切り組みを済まし、降雨を凌ぐことができる程度に屋根葺きを終わっただけで、荒壁の仕事への着手が不明な時期のもの=建物とはいえない(大審院判決昭和8年3月24日)
  • 屋根・囲壁ができたもの=床・天井ができていなくても建物とみなせる(ただし住宅用でないもの。大審院判決昭和10年10月1日)

なお、建築途中であり、「建物といえない」ものは、土地に「従として符合した物」として、土地の所有者の所有物(定着物)扱いとなります。

登記を必要とする物権とは

本条では、登記を必要とする不動産の物権について、特に明記はされていません。

この点について、不動産登記法によると、次のとおりです。

不動産登記法第3条(登記することができる権利等)

登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第2項及び第105条第1号において同じ。)についてする。

(1)所有権

(2)地上権

(3)永小作権

(4)地役権

(5)先取特権

(6)質権

(7)抵当権

(8)賃借権

(9)採石権(採石法(昭和25年法律第291号)に規定する採石権をいう。第50条及び第82条において同じ。)

「第三者」とは

本条の第三者は「当事者以外の者」ではない

本条における第三者とは、現在の判例・通説(制限説)では、次の者とされています。

民法第177条における第三者の定義

第三者とは、「登記の欠缺を主張するについて正当の理由を有する第三者」(大審院民事連合部判決明治41年12月15日)

つまり、当事者以外の者の全員が、本条における第三者というわけではありません。

あくまで、登記がないことを主張することについて、正当な理由がある第三者だけが、本条の第三者に該当します。

第三者の具体例:二重譲受人

本条の第三者の具体例として、最も典型的な例は、いわゆる「二重譲受人」です。

例えば、Aから不動産の譲渡を受けたBは、その不動産譲渡について登記をしなければ、Aから二重に譲渡を受けたC(本条の第三者)に対して、所有権の移転を対抗=主張できません。

これは、Cの側が、その不動産について登記をしていなかった場合であっても、Bは、同様に所有権の移転を対抗できません(大審院判決昭和9年5月1日)。

また、Cの側としては、Bが本条における第三者に該当しますので、Cが登記をしていない場合は、Bに対して、所有権の移転を対抗できません。

なお、B・Cの両者にとって、Aは第三者ではなく当事者ですので、特に登記がなくても、不動産の譲渡の意思表示があったことのみをもって、所有権の移転は対抗できます(第176条参照)。

「悪意の第三者」も第三者

なお、いわゆる「悪意の第三者」も、本条の第三者に該当します。

本条における悪意とは、登記がない事情を知っている第三者のことです。

上記の例でいえば、CがBによる不動産譲渡についての登記がない事情を知っている場合は、Cは、悪意の第三者に該当します。

この場合、Bは、登記がないことを知っている、悪意の第三者であるCに対して、不動産の譲渡について対抗できません(大審院判決明治45年6月1日、大審院判決大正10年12月10日)。

背信的悪意者は本条の「第三者」ではない

例外として、いわゆる「背信的悪意者」は、本条の第三者としては認められません。

背信的悪意者の定義

民法第177条における背信的悪意者とは、物権変動があった事実を知る者(=悪意者)のうち、当該物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義則に反し、または権利の濫用もしくは公序良俗違反に該当すると認められる事情があるものをいう。

つまり、いかに物権変動や登記がないことについて知っている悪意者であるとはいえ、登記がないことを主張することが、信義則第1条第2項)に反する場合、権利の濫用(第1条第3項)に該当する場合、公序良俗(第90条)に反する場合は、本条における第三者には該当しません。

このため、こうした背信的悪意者に対しては、登記がなくても、不動産の譲渡等を受けた者は、その譲渡等について、対抗できます。

「対抗できない」とその例外とは

本条における「対抗できない」とは、第三者に対して、物権の得喪及び変更について、(登記がなければ)主張できないということです。

なお、本条の例外として、登記がなくても対抗できるものとして、建物所有を目的とする地上権があります。

このような建物所有を目的とした地上権(および土地の賃借権)については、地上の建物の登記があれば、地上権そのものの登記がなくても、第三者に対抗できます(借地借家法第10条)。

また、このほかの例外として、立木の権利変動については、登記がなくても、「明認方法」(樹皮を削った立木そのものや、標木・看板などに氏名等を墨書することなど)によって、第三者に対抗できます。

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契約実務における注意点

不動産売買における典型的なトラブルに対処する条項

本条は、不動産の売買取引において、極めて重要な条文です。

このページでは、ごく一部の判例しか紹介していませんが、民法が制定されて以来、本条(および関連して類推適用される第94条第2項)の判例は、数多く蓄積されています。

それだけ、不動産の物権変動・移転については、トラブルが多いことを意味します。

これは、各種資格試験や、民法の教科書でも、本条(および類推適用される第94条第2項)が重要視される理由でもあります。

一般的な取引ではめったに問題にならない

ただし、逆に言えば、こうしたトラブルについては、すでに対策やノウハウが数多く存在していることを意味します。

このため、よほど特殊な事情がある場合でもない限り、売買契約の実務においては、本条が適用されるような第三者とのトラブルには、まずなりません。

重要なことは、契約の履行にあたって、宅建業者や司法書士等のサポートを受けて、登記の手続きをしっかりとおこなうことです。

こうした専門家が関与することにより、トラブルに発展するリスクは、低くなります。

注意すべき契約書

  • 不動産売買契約書
  • 土地売買契約書
  • 建物売買契約書